よりよい白血病治療のために
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5.急性白血病

A.臨床所見

 最近では白血病も早期に診断される傾向にあり、早期発見すれば当然症状も軽度であり、
治療効果もより高くなります。
息切れ、動悸、倦怠感、顔面蒼白などの貧血症状や発熱や出血症状をみます。
これらの症状は急性骨髄性白血病の方が急性リンパ性白血病よりも著明です。

  出血症状は初期には血小板減少による点状出血斑が主体ですが、播種性血管内凝固症(DIC) が
重なると著明な出血をみるようになります。
DIC は急性前骨髄球性白血病に高率に合併し、白血病細胞中の粗大顆粒中にある組織因子により
凝固が亢進して、消耗性凝固障害が起こると共に、白血病細胞内にある線溶活性物質により強い
線溶亢進を伴い、重症の出血症状を呈します。
化学療法を施行しますと細胞崩壊により、DIC がさらに悪化するという悪循環になります。
このようなDICを合併しやすい急性前骨髄球性白血病は、レチノイン酸が臨床導入される前は、
治療のたいへん難しい白血病でしたが、今はレチノイン酸のお蔭で、もっとも治りやすい白血病の
一つになりました。

  診断までの期間が遅れるほど、血液中の白血球数は増加し、脾腫、肝腫、リンパ節が腫大する
臓器浸潤をみます。
皮膚浸潤や歯肉腫脹や痔(肛門部の浸潤)なども見られます。
また、正常の血球が減少するために、発熱、貧血や紫斑などの身体症状も顕著になります。
白血病細胞が脳髄膜に浸潤して、頭痛などの髄膜刺激症状を呈することもあり、中枢神経系白血病
とよばれます。
急性リンパ性白血病に多く、完全寛解に到達したら、その時点では脳髄膜に白血病は見られなくても、
放置しておけば、この部から再発してくることが多いため、抗がん薬を髄腔内に注入したり、
頭蓋骨全体に放射線を当てて、中枢神経系白血病が発症しないように予防対策をすることが
絶対必要です。

B.検査所見

発病から診断までの期間が長ければ長いほど白血球数は増加しますが、
初期ではむしろ減少しています。骨髄は白血病細胞で充満した状態にあります。
白血病細胞の自己崩壊により尿酸やLDH が増加し、単球系白血病では血液や尿中のリゾチームが増加します。

C.診断

 白血病の診断そのものは比較的容易です。
皮膚と骨の表面を局所麻酔してから、骨の中に太い針を刺して骨髄液を吸引し、
薄く延ばした標本を色素で染色後に顕微鏡で検査して診断します。
白血病芽球が1個でもみつかれば白血病と診断できますが、白血病の芽球と正常の芽球を細胞の
形態だけで鑑別することは容易でありませんので、芽球が5%以上の時を白血病芽球とみなしています。
しかしながら、最近では遺伝子診断ができるようになりましたので、10万個の正常細胞の中に
白血病細胞が1個でも混在していれば、これを見つけることができるようになりました。
ただし、遺伝子診断は高価な診断法ですので、通常は顕微鏡検査で診断します。
そして、芽球の形態や染色体検査により、分類のところで説明したように、大きく骨髄系とリンパ系に
分けたあと、細かく分類します(表1~表4)
白血病の種類によって治療法が違いますので、細かく分類することは重要なことです。

  白血病では、骨髄は通常、白血細胞で充満していますが、時には、骨髄中の白血病細胞が
それほど多くない低形成白血病も見られます。
高齢者に多く、治療には比較的よく反応します。従来のFAB 分類では、骨髄系とリンパ系の鑑別と
2系統の細胞形質をもつ混合系統型白血病を分類することはできず、患者さんや家族に説明する
ことが困難でしたが、最近のWHO分類では急性骨髄性白血病に一亜型として分類されるようになりました。

D.治療

E.経過と予後

 無治療のままで経過をみると急性白血病患者さんは2~3ヵ月で死亡します。
現時点の最良の化学療法を行った時、小児急性リンパ性白血病では、95% 以上が完全寛解となり、
標準リスク群の80%以上、高リスク群 (年齢10歳以上、初診時白血球数3,000/μL 以上、
Ph染色体陽性など)の60%以上が治癒するものと期待されています。
ただし、成人急性リンパ性白血病では、約80%が完全寛解となりますが、化学療法だけでは、
寛解例の30%程度しか治癒は期待できません。
しかし、成人急性リンパ性白血病の約30%を占めているPh染色体陽性急性リンパ性白血病に対し、
イマチニブやダサチニブが著効することが判りましたので、このタイプの急性リンパ性白血病の
治癒率も相当向上するものと期待されます。

  急性前骨髄球性白血病では、レチノイン酸を中心とする分子標的療法により、95%前後が
完全寛解になり、80%以上が治癒できるようになりました。
再発しても、亜砒酸やタミバロテンがよく効きますので、小児急性リンパ性白血病以上に治癒率
の高い白血病になりました。

  65歳未満の急性骨髄性白血病では約80%が完全寛解となり、寛解例の40%前後が治癒するもの
と期待されています。
(8;21)転座白血病や(16)逆位白血病では、90%以上が完全寛解になり、完全寛解後のキロサイド
大量療法などで70%以上の高い治癒率が得られるようになりました。

  65歳以上の患者さんの急性骨髄性白血病と急性リンパ性白血病ともに完全寛解率は60%台であり、
一旦寛解しても多くは再発しますので、ほとんど治癒は期待できません。
G-CSF を使用することにより感染症対策が十分出来るようになりましたので、予後成績も向上すると
期待されましたが、残念ながら期待外れに終わっています。
人口の高齢化に伴い患者数も増加しておりますので、新しい治療法も求めての臨床研究が多数
行われており、その成果が期待されています。
  75才以上では治癒を得るのは困難ですので、患者さんのquality of life (QOL) を考慮した
治療が行われます。
  高齢者には、骨髄異形成症候群由来の急性白血病が多く、一般的に治療抵抗性です。
そのため、現時点では、急性前骨髄球性白血病、(8;21)転座白血病、(16)逆位白血病、
Ph陽性急性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病以外では、薬物療法をしない方がよいと思われます。

  全ての病型で言えることですが、年齢が若ければ若いほど、治る確率は高くなります。
一般的に、30歳、50歳、65歳、70歳が区切りの年齢になります。
造血幹細胞移植も40歳までは副作用に耐えることができますが、50歳以上になると厳しくなります。
それでも、日本人の平均寿命が毎年延長していることで分かるように、最近では日本人全体の体力の
衰えが遅くなっていますので、55歳になっても体力的に元気で通常の移植に耐えることのできる人が
多くなりました。
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