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3. 急性骨髄性白血病の化学療法

  本白血病の化学療法はシタラビンとイダルビシンないしはダウノルビシンによる併用化学療法によって、
まず完全寛解導入を目指します。
最新のJALSGによる前方向比較研究の結果、イダルビシンとダウノルビシンの治療効果には違いがない
ことが分かりました(図3)。
現在の強力化学療法により70~80%が完全寛解に到達しますが、年齢が若いほど寛解率は高くなり、
逆に高齢者では完全寛解率は低くなります。
これは、一般的に高齢者は強力な化学療法に耐えられないためです。
治療研究生存曲線
図3. JALSG AML89 study で治療された成人急性前骨髄球性白血病の完全寛解例の
年齢別無再発生存曲線
 したがって、65歳以上の患者さんでは、後でも説明しますが、急性前骨髄球性白血病、
(8;21)転座型白血病や(16)逆位型白血病を除いて、治癒を目指すというよりも、病気を弱い
治療でコントロールしてQOL (quality of life)を優先する方法を選ぶことが多くなります。
そのため高齢者では、24時間連続の持続点滴が必要なシタラビンの代わりに2~3時間の点滴で
投与されるエノシタビンがよく用いられます。
50%以上の確率で一旦は完全寛解になりますが、残念ながら多くは再発します。
治癒を望むためには、副作用覚悟の強力治療やミニ骨髄移植が必要です。
強力な治療は副作用を伴うことより、治療効果の確率と今後の見通しを知っていただき、
本人の意向を尊重する治療方針をとるべきでしょう。

  75歳以上の患者さんでは、急性前骨髄球性白血病以外は、副作用の出る化学療法は
むしろ行なわないで、QOLを優先する方法をとります。
急性白血病は重症で進行の早い病気のため、ホスピスが受け入れてくれることは稀ですが、
75歳以上まで生きてこられたことをむしろ祝福し、副作用とのバランスを理解していただき、
本人の意向を尊重する治療方針を採るべきでしょう。

  完全寛解になった後、寛解導入療法に用いた薬剤に加え、ミトキサントロン、アクラルビシン、
エトポシド、ビンクリスチンなどの導入療法に用いた薬とは交差耐性のない薬剤を併用して地固め
療法を3~4コース施行します。
最近では、キロサイド大量療法も地固め療法期に使われるようになりました。
既に説明しましたように、最近は、地固め療法をより強力にすることによって維持・強化療法は
省略するようになりました。
ただし、キロサイド大量療法などの強力治療は、当然副作用は強くなり、治療関連死もみられます
ので注意が必要です。

  最新のJALSGによる前方向比較研究の結果、やや強い地固め療法を4コース行えば、
その後の維持・強化療法は必要がないこと、また、3コースのシタラビン大量療法とほぼ同じ
成績が得られることが分かりました(図4)。
ただし、(8;21)転座型白血病や(16)型逆位白血病には、シタラビン大量療法がよさそうである
という結果がでています(図5)。
図4 JALSG AML201 治療研究 地固め療法後の生存曲線
図4
図5 t(8;21)とinv(16)例の地固め療法後の生存曲線
図5
 WHO分類では独立した急性骨髄性白血病として分類されるようになった(8;21)転座型白血病や
(16)逆位型白血病を持つ急性骨髄性白血病は、これまでの治療法でも、完全寛解率も治癒率も
高いことが判っており、さらに、地固め療法期にシタラビン大量療法を施行することにより
治癒率も高くなりますので、造血幹細胞移植の必要のない低リスク群の白血病と見なされています。


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