3.白血病の病態と分類
白血病細胞が骨髄を占拠し、正常造血機能を抑えるために、正常の血液細胞、すなわち、
赤血球、白血球、血小板ができなくなります。
その結果、赤血球減少による貧血症状や、正常白血球の減少、特に、好中球減少による感染症状
(発熱)や、血小板減少による出血症状が現われます。
次いで病状が進行すると、脾臓、肝臓およびリンパ節へ白血病細胞が浸潤することによる脾臓、
肝臓およびリンパ節の腫大がみられるようになります。
がん化は血球を作る基になる造血幹細胞の段階でおこり、血液細胞の分化・成熟のある一定の
段階で分化が停止し、未分化な芽球細胞が増殖して腫瘍を構成している場合と、生体の調節能を
逸脱し自律性の増殖を示すものの、一応分化・成熟する能力を保持している場合があります。
前者は急性白血病、後者は慢性白血病や骨髄異形成症候群です。
急性白血病は急性に経過し、未治療なら、患者さんは数ヵ月内に死亡されますが、
慢性白血病は未治療でも数年の慢性経過をとります。
急性白血病と慢性白血病のがん化機構は全く違っていますので、急性の病気が慢性化する
というのとは違います。
がん化している細胞系列により、骨髄性とリンパ性に分け、類縁疾患も含め表1のように分類しています。
通常「骨髄穿刺」とか「マルク」といわれる検査によって、骨の中に太い針を刺して骨髄液を吸引し、
薄く延ばした標本を色素で染色後に顕微鏡で検査して、白血病細胞の形により、いくつかの種類に
分類します。
つい最近までは、FAB分類により分類されていました。
この分類法は、それまで個々の研究者が主観的に行っていた分類法に、ペルオキシダーゼ染色の
陽性率や細胞の形態分類に数量化を取り入れた分類法で、より客観的となり、国際比較が
可能になりましたので、広く採用されていました。
赤血球、白血球、血小板ができなくなります。
その結果、赤血球減少による貧血症状や、正常白血球の減少、特に、好中球減少による感染症状
(発熱)や、血小板減少による出血症状が現われます。
次いで病状が進行すると、脾臓、肝臓およびリンパ節へ白血病細胞が浸潤することによる脾臓、
肝臓およびリンパ節の腫大がみられるようになります。
がん化は血球を作る基になる造血幹細胞の段階でおこり、血液細胞の分化・成熟のある一定の
段階で分化が停止し、未分化な芽球細胞が増殖して腫瘍を構成している場合と、生体の調節能を
逸脱し自律性の増殖を示すものの、一応分化・成熟する能力を保持している場合があります。
前者は急性白血病、後者は慢性白血病や骨髄異形成症候群です。
急性白血病は急性に経過し、未治療なら、患者さんは数ヵ月内に死亡されますが、
慢性白血病は未治療でも数年の慢性経過をとります。
急性白血病と慢性白血病のがん化機構は全く違っていますので、急性の病気が慢性化する
というのとは違います。
がん化している細胞系列により、骨髄性とリンパ性に分け、類縁疾患も含め表1のように分類しています。
通常「骨髄穿刺」とか「マルク」といわれる検査によって、骨の中に太い針を刺して骨髄液を吸引し、
薄く延ばした標本を色素で染色後に顕微鏡で検査して、白血病細胞の形により、いくつかの種類に
分類します。
つい最近までは、FAB分類により分類されていました。
この分類法は、それまで個々の研究者が主観的に行っていた分類法に、ペルオキシダーゼ染色の
陽性率や細胞の形態分類に数量化を取り入れた分類法で、より客観的となり、国際比較が
可能になりましたので、広く採用されていました。
FAB分類では、先ず骨髄中の細胞全体の中で白血病細胞(芽球とも呼びます)が30%以上を
占めるものを急性白血病とし、30%未満のものを骨髄異形成性症候群に分類します。
急性白血病のうち、ペルオキシダーゼ染色陽性芽球が3%以上なら急性骨髄性白血病
(acute myeloid leukemia, AML)、3%未満なら急性リンパ性白血病(acute lymphoblastic leukemia, ALL)
と分類します。
急性骨髄性白血病はM0からM7までの8型に、急性リンパ性白血病はL1からL3までの3型に分類します。
M3は急性前骨髄球性白血病で、先に述べた15番染色体と17番染色体の相互転座が認められます。
M5は急性単球性白血病。M6は赤血球系の白血病すなわち急性赤白血病。
M7は血小板をつくる細胞の白血病すなわち急性巨核芽球性白血病です。
ただし、最近は、WHO(World Health Organization, 世界保健機関)分類が広く用いられるように
なりました(表1~4)。
FAB分類では白血病芽球が骨髄細胞中で30%以上を占めるものを急性白血病として、
骨髄異形成症候群と区別していましたが、このWHO分類法では、骨髄性白血病では芽球が
20%以上のものを急性白血病としましたので、FAB分類の骨髄異形成症候群のうち、
骨髄中の白血病芽球が20~30%であった白血病移行期RAEB(RAEB-T)がなくなり、
20%未満のものだけが骨髄異形成性症候群と分類されるようになりました。
また、特定の染色体異常を持っている白血病が一つのタイプにまとめられました。
しかし、一定の特徴をもたない白血病は、従来のFAB分類を採用していますので、
FAB分類は今も使われています。
WHO分類において、リンパ性白血病は、その腫瘍細胞の起源によりT細胞性とB細胞性とに
分けるとともに、悪性リンパ腫との明確な区別をなくなりました。
言葉をかえると、同じ起源と形質を持つ腫瘍細胞が、骨髄を中心に増殖している場合や血液中に多数
出現している場合を白血病とみなし、リンパ組織を中心に増殖している場合を悪性リンパ腫としたのです。
そのため、急性リンパ性白血病という分類は正式にはなくなり、最も未熟な細胞から成り立っていることを
示す芽球性白血病/リンパ腫と分類されるようになりました。
それでも、急性リンパ性白血病という言葉は古くからある馴染みのある病気ですので、
芽球性白血病/リンパ腫のうち、骨髄中の芽球が20~25%以上を占めるものを急性白血病と呼んでいます。
リンパ性白血病のWHO分類では、骨髄中の芽球が何%以上を急性リンパ性白血病と定義している
わけではありませんが、今後は急性骨髄性白血病に合わせるかたちで、20%が採用されるのでは
ないかと思います。と言っても、芽球性白血病/リンパ腫の治療法そのものは原則的に同じです。
占めるものを急性白血病とし、30%未満のものを骨髄異形成性症候群に分類します。
急性白血病のうち、ペルオキシダーゼ染色陽性芽球が3%以上なら急性骨髄性白血病
(acute myeloid leukemia, AML)、3%未満なら急性リンパ性白血病(acute lymphoblastic leukemia, ALL)
と分類します。
急性骨髄性白血病はM0からM7までの8型に、急性リンパ性白血病はL1からL3までの3型に分類します。
M3は急性前骨髄球性白血病で、先に述べた15番染色体と17番染色体の相互転座が認められます。
M5は急性単球性白血病。M6は赤血球系の白血病すなわち急性赤白血病。
M7は血小板をつくる細胞の白血病すなわち急性巨核芽球性白血病です。
ただし、最近は、WHO(World Health Organization, 世界保健機関)分類が広く用いられるように
なりました(表1~4)。
FAB分類では白血病芽球が骨髄細胞中で30%以上を占めるものを急性白血病として、
骨髄異形成症候群と区別していましたが、このWHO分類法では、骨髄性白血病では芽球が
20%以上のものを急性白血病としましたので、FAB分類の骨髄異形成症候群のうち、
骨髄中の白血病芽球が20~30%であった白血病移行期RAEB(RAEB-T)がなくなり、
20%未満のものだけが骨髄異形成性症候群と分類されるようになりました。
また、特定の染色体異常を持っている白血病が一つのタイプにまとめられました。
しかし、一定の特徴をもたない白血病は、従来のFAB分類を採用していますので、
FAB分類は今も使われています。
WHO分類において、リンパ性白血病は、その腫瘍細胞の起源によりT細胞性とB細胞性とに
分けるとともに、悪性リンパ腫との明確な区別をなくなりました。
言葉をかえると、同じ起源と形質を持つ腫瘍細胞が、骨髄を中心に増殖している場合や血液中に多数
出現している場合を白血病とみなし、リンパ組織を中心に増殖している場合を悪性リンパ腫としたのです。
そのため、急性リンパ性白血病という分類は正式にはなくなり、最も未熟な細胞から成り立っていることを
示す芽球性白血病/リンパ腫と分類されるようになりました。
それでも、急性リンパ性白血病という言葉は古くからある馴染みのある病気ですので、
芽球性白血病/リンパ腫のうち、骨髄中の芽球が20~25%以上を占めるものを急性白血病と呼んでいます。
リンパ性白血病のWHO分類では、骨髄中の芽球が何%以上を急性リンパ性白血病と定義している
わけではありませんが、今後は急性骨髄性白血病に合わせるかたちで、20%が採用されるのでは
ないかと思います。と言っても、芽球性白血病/リンパ腫の治療法そのものは原則的に同じです。
表1.白血病および類縁疾患の分類 (WHO分類 2008年版)
分類 | 白血病名および疾患名、備考 |
1 | 急性骨髄性白血病ならびに類縁前駆細胞腫瘍 表2 (acute myeloid leukemia, AML, and related precursor neoplasms) |
2 | 系統不明確白血病(acute leukemia of ambiguous origin) |
3 | 前駆リンパ性腫瘍 (precursor lymphoid neoplasms) 表4 |
1) | Bリンパ芽球性白血病/リンパ腫 (B lymphoblastic leukemia/lymphoma, B-ALL/LBL) |
2) | Tリンパ芽球性白血病/リンパ腫 (T lymphoblastic leukemia/lymphoma, T-ALL/LBL) |
4 | 成熟B細胞腫瘍 (mature B-cell neoplasms) |
1) | 慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫 (chronic lymphocytic leukemia/lymphoma, CLLL) |
2) | B細胞前リンパ球性白血病(B-cell prolymphocytic leukemia) |
3) | 毛様細胞白血病 (hairy cell leukemia, HCL) |
5 | 成熟T細胞腫瘍・NK細胞腫瘍 (mature T-cell and NK-cell neoplasms) |
1) | T細胞前リンパ球性白血病(T-cell prolymphocytic leukemia) |
2) | T細胞大顆粒リンパ球性白血病 (T-cell large granular lymphocytic leukemia) |
3) | 成人T細胞性白血病/リンパ腫(adult T-cell leukemia/lymphoma, ATLL) |
6 | 骨髄増殖性腫瘍群 (myeloproliferative neoplasms, MPN) |
1) | 陽性慢性骨髄性白血病 (chronic myelogenous leukemia, CML, BCR-ABL1 positive) |
2) | 慢性好中球性白血病(chronic neutrophilic leukemia, CNL) |
3) | 真性赤血球増多症 (polycythemia vera, PV) |
4) | 原発性骨髄線維症 (primary myelofibrosis, PMF) |
5) | 本態性血小板血症 (essential thrombocythemia, ET) |
6) | 慢性好酸球性白血病(chronic eosinoophilic leukemia, CEL) |
7 | 骨髄異形成症候群 (myelodysplatic syndromes, MDS) 表3 |
表2.急性骨髄性白血病(AML)のWHO分類 (2008年版)
分類 | 白血病名および疾患名 |
1 | 再現性のある遺伝子異常を有する急性骨髄性白血病 |
1) | (8;21)転座型急性骨髄性白血病; RUNX-RUBX1T1 遺伝子 |
2) | (16)逆位型急性骨髄性白血病;CBFB-MYH11 遺伝子 |
3) | (15;17) 転座型急性前骨髄球性白血病; PML-RARA 遺伝子 |
4) | (9;11)転座型急性骨髄性白血病;MLLT3-MLL 遺伝子 |
5) | (6;9)転座型急性骨髄性白血病;DEK-NUP214 遺伝子 |
6) | (3)逆位型急性骨髄性白血病;RPN1-EVI1 遺伝子 |
7) | (1;22) 転座型急性巨核芽球性白血病; RBM15-MKL1 遺伝子 |
8) | NPM1 遺伝子変異型急性骨髄性白血病 |
9) | CEBPA 遺伝子変異型急性骨髄性白血病 |
2 | 異形成像を伴う急性骨髄性白血病 |
3 | 治療関連骨髄性白血病 |
4 | 上記以外の急性骨髄性白血病 |
a) | 低分化急性骨髄性白血病 (FAB分類のM0に相当) |
b) | 成熟傾向のない急性骨髄性白血病 (FAB分類のM1に相当) |
c) | 成熟傾向のある急性骨髄性白血病 (FAB分類のM2に相当) |
d) | 急性骨髄単球性白血病 (FAB分類のM4に相当) |
e) | 急性単球性白血病 (FAB分類のM5に相当) |
f) | 急性赤白血病 (FAB分類のM6に相当) |
g) | 急性巨核球性白血病 (FAB分類のM7に相当) |
h) | 急性好塩基球性白血病 |
i) | 骨髄線維症を伴う急性汎骨髄症 |
5 | 骨髄肉腫 |
6 | ダウン症候群関連骨髄増殖 |
a) | 一過性異常骨髄形成 |
b) | ダウン症候群関連骨髄性白血病 |
7 | 系統不明確な急性白血病 |
a) | 急性未分化白血病 |
b) | (9;22)転座型混合形質急性白血病;BCR-ABL1 遺伝子 |
c) | (v;11q23)転座型混合形質型急性白血病;MLL 遺伝子異常 |
d) | 混合形質型急性白血病、B細胞/骨髄性 |
e) | 混合形質型急性白血病、T細胞/骨髄性 |
f) | NK細胞リンパ芽球性白血病/リンパ腫 |
表3.骨髄異形成症候群のWHO分類 (2008年版)
分類 | 白血病名および疾患名 |
1 | 一系統の不応性血球減少症 |
a) | 不応性貧血 (RA) |
b) | 不応性好中球減少症 (RN) |
c) | 不応性血小板減少症 (RT) |
2 | 環状鉄芽球を伴う不応性貧血 (RSRA) |
3 | 多系統の不応性血球減少症 (MLRC) |
4 | 芽球過剰の不応性貧血 (RAEB) |
1) | タイプ-1 (骨髄中の芽球が5~10%) |
2) | タイプ-2 (骨髄中の芽球が10~20%) |
5 | 単独5q-関連骨髄異形成症候群 |
6 | 分類不能骨髄異形成症候群 |
7 | 小児骨髄異形成症候群 |
表4.リンパ性白血病のWHO分類 (2008年版)
分類 | 白血病名および疾患名 |
1 | 前駆リンパ系細胞腫瘍 |
1) | Bリンパ芽球性白血病/リンパ腫 |
2) | 再現性のある染色体転座を有するBリンパ芽球性白血病/リンパ腫 |
a) | (9;22)転座型Bリンパ芽球性白血病/リンパ腫;BCR-ABL1 遺伝子(Ph陽性ALL) |
b) | (v;11q23) 転座型Bリンパ芽球性白血病/リンパ腫; MLL 遺伝子異常 |
c) | (12;21) 転座型Bリンパ芽球性白血病/リンパ腫;TEL-AML1 遺伝子 |
d) | 多二倍体染色体型Bリンパ芽球性白血病/リンパ腫 |
e) | 少二倍体染色体型Bリンパ芽球性白血病/リンパ腫 |
f) | (5;14) 転座型Bリンパ芽球性白血病/リンパ腫;IL3-IGH 遺伝子 |
g) | (1;19) 転座型Bリンパ芽球性白血病/リンパ腫;E2A-PBX1 遺伝子 |
2 | Tリンパ芽球性白血病/リンパ腫 (前駆T急性リンパ芽球性白血病)(T-ALL) |