よりよい白血病治療のために
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黒澤 修兵 先生(都立大塚病院 輸血科)

都立大塚病院輸血科 黒澤 修兵

  今回JALSG Young Investigator ASH Travel Awardに選出して頂き、 57th ASH Annual
Meeting and Expositionに参加致しました。
今年のASHはフロリダ州のオーランドで開催されました。オーランドはウォルト・ディズニ
ー・ワールド・リゾートやユニバーサル・オーランド・リゾートなどで有名な観光都市です。
温暖な気候で学会期間中は天候にも恵まれました。 初めての海外学会参加でしたが、 大
きなトラブルなく無事に過ごすことができました。

  出発前から聞かされていましたが、 ASHの規模の大きさには大変驚かされました。
Poster Sessionでは演題が多すぎて、 数時間かけても興味ある分野を回って見るだけで精
一杯でした。 一番広い会場を使ったPlenary Sessionではモニターを10枚も使用しており、
演出も派手だったのですが、 その中でも日本人の先生が発表されており(Abstract 2)、 大
変感銘を受けました。 数多くの興味ある演題が発表されていましたが、 いくつか下記に紹
介致します。

①AMLの新規薬剤について
教育講演でもFLT-3阻害薬やIDH阻害薬などAMLの分子標的薬が取り上げられていましたが、
今年も分子標的薬の臨床研究の結果がOral SessionやPoster Sessionで数多く報告されて
いました。 Plenary Sessionでは初発未治療のAMLに対してFLT-3阻害薬のmidstaurinを従
来の化学療法に併用した第Ⅲ層試験の結果が発表され、 併用群でCR率やOSの改善が示さ
れていました(Abstract 6)。

②ウイルス特異的CTL療法について
近年移植後の難治性ウイルス感染症に対して、 第三者由来ウイルス特異的CTL療法の臨床
研究が報告されていますが、 シドニー大学のグループはプールされた第三者由来ウイルス特
異的CTLを主に難治性CMV感染症に対して投与して良好な成績が得られた報告をしていまし
た(Abstract 623)。 同様にAbstract 622でもウイルス特異的CTL療法の報告を拝聴致しまし
た。

③移植後の腸内細菌の報告について
移植と腸内細菌の報告は今回のASHでもいくつか報告されていました。 Oral Sessionでは今
年のbloodでBlautiaがGVHD発症の抑制に働くという論文を発表したMSKCCのグループが、
新たに移植後Acidaminococcus intestiniのrelative abundanceが高いと再発が減るという報
告をしていました。

  私は若輩ながら日頃から多くの患者様を担当させて頂き、 診療に当たっていますが、 治療
が奏効しなかったり多くの合併症を引き起こしたりと、 血液疾患を治療する難しさを痛感し
ております。 患者様や家族が辛い思いをしているのを傍観するしかない事も多々あります。
今回のASHで最も感じたことは、 こんなにも沢山の新規薬剤や新しい治療戦略の研究が進
行しているのかという事でした。 世界中の血液内科医が忙しい合間を縫って、 自分と同じよう
な悩みや疑問から、 何とか病気を治せないかと、 知恵を絞り出して新たな治療などを発案し、
試行錯誤を繰り返しているという、 各人の大変な努力の成果がASHという大規模な学会を形
成し、 将来の血液学の進歩に繋がっているのだと、 多くの研究成果をみて当たり前ながら感
銘を受けました。 私も今後、 自分の研究成果をどんどん世界に発信し、 将来的に目の前の患
者様の診療を向上させたいと、 血液内科医として大きなモチベーションになりました。

  日曜日に催された宮脇修一先生主催の懇親会では、 高名な先生方とお話する機会を頂き、
緊張しましたが貴重な経験となりました。 他にもASH期間中の経験がどれも、 私にとって大
変有意義でした。 NPO-JALSGの方々や、 御多忙にも関わらず快く送り出してくださった病院
のスタッフの方々に心より御礼申し上げます。 今回の学会の経験を糧に今後とも精進していき
たいと強く考えております。



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