よりよい白血病治療のために
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脇田 充史 先生(名古屋市立東市民病院)

ASH2008ポスター発表報告  名古屋市立東市民病院  脇田 充史

はじめに

12月のサンフランシスコはそこそこ寒かったものの晴れの日続きの第50回米国血 液学会であった。
世界同時不況にもかかわらず、2100人以上の血液内科医や研究者が集う大規模な学会は華やかに行われ、
ポスター発表だけでも3000題 あまりの演題数であった。
高齢者の急性骨髄性白血病に関する演題は90題近くあり、その中では分子標的薬などの新薬の臨床研究が目立っていた。

発表内容

2961 A Randomized Trial Comparing Individualized Vs. Non-Individualized Treatment for Elderly Acute Myeloid Leukemia: JALSG GML200 Study Monday, December 8, 2008 Hall A (Moscone Center)  Poster Board III-43

緒言

高齢者の急性骨髄性白血病(AML)の治療成績は過去30年間あまり改善していない、
しかし日本人の高齢化の為に発生率は着実に上昇している。JALSG-GML200研究においては登録期間中に
発生した適格症例以外のすべてのAML症例 を登録した。
高齢者では強力な化学療法を含む臨床試験に登録できる例はあまり多くないと考えられ
非登録例の背景も重要と考えられたからである。
治療効果に応じて抗がん剤を増量する個別化療法を評価するための無作為 比較試験を実施し、
地固め療法の際にはウベニメクスの効果についても検証した。

方法

2000年4月から2005年8月まで65歳以上のAMLすべての登録が行われて、適格症例はセット療法(A群)と
個別化療法(B群)に割り付けられた。その他の症例はC群になる。
A群の寛解導入療法はDNR+BH-ACを3x8日投与し、B群は骨髄穿刺の結果により5x12日まで投与を追加する。
完全寛解例についてはウベニメクスを投与するUY群としないUN群に再割付が行われる。
地固め療法は3コース行い、1)BH-AC+MIT、2)BH-AC+DNR+ETP、3)BH-AC+ACRである。

結果

374例が登録され、そのうち244例がA群とB群に割り付けされており、このうち235例が評価可能であった。
患者背景は年齢や性別と病型にA群とB群で差はなく、A群の方が予後不良な核型がやや多かった。
寛解導入療法の結果は、A群のCR率は63.2%でB群は65.3%(p = 0.75)。
男性と女性の症例のCR率は、いずれの群においてもかなり異なりましたA群の男性53.9%、女性73.3%、B群の男性52.3%、女性76.8%であった。
3年生存率はA群25.5%、B群21.5%(p = 0.56)だった。完全寛解に到達した患者の中では、ウベニメクスを投与したUY群の3年生存率は43.1%、UN群は26.9%(0.073)だった。
C群は130例で、この群のほとんどの症例は治療群と同じような併用化学療法を受けており、3年生存率は29.4%と予想外に高かった。

結論

DNR+BH-ACは高齢者のAML患者に対する寛解導入療法としてひとつの優れた方法である。
個別化療法による抗がん剤の増量はあまり利点がなかった。
女性症例の完全寛解率が良いのは、日本の女性の長い寿命と関係があるかもしれない。
長期の生存率はまだ改善されておらず、より良い寛解後の治療の探索が必要である。
ウベニメクスの併用は完全寛解に到達した高齢者AMLの長期生存に有用である可能性が示唆された。

質疑応答

分子標的薬や新規抗がん剤などの新薬に関する演題が多かったためか、BH-ACは新しい薬剤なのかと何人かに聞かれた。
30年前から日本で使われていると答えるとみんな見事に関心をなくして立ち去っていった。
ウベニメクスもあまり国際的には知られていないが、こちらについてはインド人風の人(アメリカ人かも)に新薬かどうか聞かれただけだった。
またBH-ACがAra-Cのように持続点滴しなくても良いことから入院して治療した患者はどれくらいいるのかと質問されて、臨床試験だから今回はほぼ全員入院でしましたとちょっと苦しい説明をした。
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