よりよい白血病治療のために
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1.治療理念

 白血病はtotal cell kill の治療理念に基づき、完全に治すこと、すなわち、治癒を目指して治療します。
すなわち、マウスの白血病では白血病細胞を1個残らず殺さない限り完全に治すことができないことが
確かめられていますので、ヒト白血病でも白血病細胞をゼロにするまで徹底的に治療する必要が
あるとする治療理念です。
  これまでの白血病化学療法の歴史は、この考えが正しいことを証明しています。
しかし、急性前骨髄球性白血病に対するレチノイン酸や慢性骨髄性白血病に対するイマチニブによる
分子標的療法の驚くべき有効性は、強力な治療法のみが治癒をもたらすものではないことを教えています。
原因となっている遺伝子異常をピンポイント的に攻撃するため副作用が少ない分子標的療法は、
今後我々が目指すべき方向を示していると言えます。
  治癒を得るための急性白血病の薬物療法は以下の二相よりなっています。

a.完全寛解導入療法

 普通の急性白血病では、寛解導入療法は化学療法を行います。
急性前骨髄球性白血病ではレチノイン酸を主として使用し、必要に応じて化学療法を追加します。
フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病では、イマチニブと化学療法を一緒に併用します。

  診断時には患者さん体内には約1兆個の白血病細胞がありますが、寛解導入療法により
10億個以下に減少しますと、骨髄中で正常の白血球、赤血球、血小板が回復してきます。
血球数が正常値になり、骨髄中の芽球も5%未満になり、白血病細胞の臓器浸潤も消失しますと
完全寛解(complete remission, CR)とよびます。治った(治癒)と言わないのは、完全寛解になっても
患者さん体内には、計算上10億個個以下の白血病細胞が残存しており、放っておけば必ず
再発してくるためです。
ただし、完全寛解状態が3年以上続けば、まず再発しませんので、完全寛解が5年以上続けば
治癒したとみなしています。

  最近では、白血病に特徴的な遺伝子をRT-PCR法という最新の方法で検査することにより、
患者さんの体内に残っている微量の残存白血病細胞を100万個レベルまで検出することができます。
遺伝子を検査しても白血病細胞が見つからない状態を分子的完全寛解と言います。
一方、これまでのように顕微鏡で判定したものは血液学的完全寛解あるいは単に完全寛解とよびます。
分子的完全寛解状態になれば、より治癒に近づきますが、再発することもあり、完全に治ったとは
いい切れませんので、あくまでも寛解という言葉を使います。

b.寛解後療法

 完全寛解になり正常の血液細胞が回復しても、患者さんの体内には10億個以下の白血病細胞が
残っているため、治癒を得るためにはさらに治療が必要です。
寛解後療法には、導入療法と同じ程度の強さの治療をする地固め療法と、退院後外来通院中に行う
維持・強化療法の二つがあります。
治癒を得るためには、3~4コースの地固め療法と1~2年の維持・強化療法が必須であることが
経験的に判っていました。
  しかし、最近、Japan Adult Leukemia Study Group (JALSG)から、急性骨髄性白血病では、
地固め療法をより強力にすれば維持・強化療法は必要ないという成績が出されたため、
維持・強化療法は行なわれなくなりました。
ただし、急性リンパ性白血病では、血液学的完全寛解状態にあっても体内に残存している
白血病細胞が維持・強化療法によって分子的完全寛解になるという報告が多いため、
2年~1年の維持・強化療法が行なわれます。
なお、骨髄移植療法は最も強力な寛解後療法ですが、その代わり、副作用も最も強く出ます。
  治癒を得るには、顕微鏡だけで決める血液学的完全寛解では不十分であり、
異常遺伝子の見つからない分子的完全寛解が必要です。
最近、WT1というがん遺伝子を指標にして、分子的寛解状態を調べる方法が開発され、
健康保険でも認められました。

c.多剤併用療法

 多種の抗白血病剤を組み合わせて使う併用療法は、互いの抗白血病作用を相乗的に増強することに
加え、個々の薬剤が持つ副作用を分散させることが出来ますので、現行の抗白血病化学療法のほとんど
は併用療法で行われています。

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