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5.急性リンパ性白血病の化学療法

 本白血病の化学療法は、プレドニソロン、ビンクリスチン、ダウノルビシンないしはドキソルビシン、
シクロフォスファミド、アスパラギナーゼを中心とする併用療法により完全寛解導入を目指します。
小児急性リンパ性白血病の95% 、成人急性リンパ性白血病の70~80% が完全寛解に到達します。
その後、メソトレキセートの脊髄腔内注射や頭蓋放射線照射による中枢神経白血病予防を行います。
そして、導入療法と同じ薬剤やこれらとは交差耐性のない薬剤を併用して地固め療法を3コースほど行い、
さらに6MPとメソトレキセートを中心とする維持療法を約2年間行います。
小児では標準リスク群の80%以上、高リスク群の60%以上を治癒できるようになりましたが、
成人では化学療法に難反応性のPh染色体陽性が多いこともあって、完全寛解例の30%前後にしか
治癒が得られませんでした。
それでも、年齢30歳未満、初診時の白血球数3,000/μL未満でPh染色体を持たない予後良好群では、
50%以上が化学療法だけでも治癒可能です。
  最近では、成人でも25~35歳ころまでは、小児の治療プロトコールで治療する方が、小児と
同程度の良好な治療成績が得られることが分かり、小児と同じ治療法が行われるようになりました。
小児プロトコールでは、メソトレキサーやL-アスパラギナーゼをより多量使用しますので、
より強い副作用も出ますが、30歳ころまではどうにか耐えることができます。
しかし、これ以上の年齢層では、副作用のため、小児プロトコールでも、治療成績の向上は
難しいため、造血幹細胞移植が優先されます。

 少し前までは、Ph染色体陽性すなわちBCR-AML1 陽性の急性リンパ性白血病は、
小児においても化学療法だけでは治癒させることは難しく、造血幹細胞移植を行っても
40%前後しか治癒できませんでした。
しかし、前にも説明しましたように、Ph染色体陽性の慢性骨髄性白血病の原因となっている
異常融合遺伝子BCR/ABLが作るチロシン・キナーゼ活性を特異的に阻害するイマチニブが、
Ph染色体陽性急性リンパ性白血病に非常によく効くことが判り、従来の化学療法にイマチニブを
併用することにより、95%以上の患者さんを完全寛解に導入することができるようになりました。

  完全寛解になった患者さんには、もし白血球抗原(HLA)の適合するドナーがいれば
造血幹細胞移植を行ないますが、年齢が高くて移植が行えなかったり、適合ドナーが見つからない
場合でも、イマチニブと従来の化学療法を使うことにより、長期生存が可能となってきました。
さらに、イマチニブよりも300倍も強力な第二世代のチロシン・キナーゼ阻害薬であるダサチニブが、
この白血病に保険適応されましたので、かつては難治性であったPh染色体陽性急性リンパ性
白血病も、きわめて近い将来に、薬だけで治せる時代が来ると期待されています。


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