よりよい白血病治療のために
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和田 典也 先生(京都大学医学部附属病院 血液内科)

 私はこの度、JALSG Young Investigator ASH Travel Award 2022のご支援を賜り、64th ASH Annual Meetingに参加させていただきましたので、ここにご報告申し上げます。

 私は後期研修を終えた2022年度より大学院に進学し、急性白血病の治癒を目指したトランスクリプトーム研究に従事しています。臨床医として様々な患者さんを担当する中で生まれたクリニカルクエスチョンを、今までは臨床研究で、これからは基礎研究でも解決できればと考えています。基礎から臨床まで幅広くカバーする本学会へ参加は、研究内容の方向性を見定める上で大変貴重な機会となりました。

 トランスクリプトームとは、細胞・組織に存在するRNA分子全体のことを指します。従来の研究は、細胞集団をまとめて解析するバルク解析が中心でしたが、近年のトランスクリプトーム解析技術の進歩により、一細胞レベルでの解析を行うことが可能となりました。今回の学会では、シングルセルRNAシークエンス(scRNA-seq)を用いた研究に関する演題が実に20以上あり、最先端の潮流を窺い知ることができました。中でも興味深かったのは、加齢と共にクラステリン陽性の造血幹細胞の集団が増加するとの報告です。彼らは、10週齢(young)、12ヶ月齢(middle-aged)、20ヶ月齢(aged)のマウスの造血幹細胞を対象に、scRNA-seqを行っています。その結果、20ヶ月齢のマウスでは、myeloid系細胞集団が増加し、その集団はクラステリン高発現であったと報告しています。さらにクラステリン遺伝子の発現制御を評価するために、Assay for Transposase-Accessible Chromatin sequence(ATAC-seq)も行われておりました。本研究は、シングルセル解析を行うことで、細胞種特異的に発現する分子を同定し、さらにATAC-seqを行うことで、その発現制御機構を解明しようとしている点で、非常に興味深く感じました。その他にも、long-read RNA sequencingや空間トランスクリプトーム解析など、最先端のトランスクリプトーム解析技術を用いた演題が散見されました。このような技術を用いることで、急性白血病の病態を維持する新規分子、及びその転写メカニズムを、一細胞レベルで明らかにしていきたいと改めて感じました。

 最後になりましたが、このような貴重な機会をいただき、JALSGの皆様、選考委員の方々、及びご指導いただいている先生方には、改めまして大変感謝申し上げます。今回の経験を活かし、患者さんの治療成績向上に結びつくような新規の知見を発見し、血液学の発展に寄与したいと存じます。
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