よりよい白血病治療のために
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近川 由衣 先生(金沢大学附属病院 血液内科)

 ASHの存在は、学生時代から血液内科の先生を通して聞いたことがありました。初期研修医、そして血液内科医となった後も、ASHに参加した先生方が報告会を行うのを、憧れと驚きをもって聞いていましたが、はるか遠い夢の舞台として捉えていました。そんな最中、ASHに参加する機会を与えていただいたことは、まさに降って湧いた幸運でした。嬉しく、興奮すると同時に、あまりのスケールにただ圧倒されるのではないか、内容についていけないのではないかと不安を抱いたことを覚えています。実際、会場の広さ、演題数はこれまで参加した学会を大きく凌いでおり、内容も最先端かつ大規模のstudyばかりで、これがASHか、と感嘆しました。様々な新薬が登場する中、いかにして移植を回避するか、もしくは移植非適応のハイリスク症例の予後をいかにして改善するか、に焦点をあてた報告が多いように感じました。

 移植非適応の中-高リスクAML症例を対象とした寛解後療法として、経口の脱メチル化薬による維持療法の効果を検討したRCTの報告では、randomizationから1年後、2年後ともに治療群のOSが優っており、内服という患者負担の少ない方法でありながら一定期間の効果が期待できる点が非常に魅力的に感じました。しかしながら、内服を継続していても4年後の時点では両群のOSはほぼ一致しており、改めて同種移植の意義を感じざるを得ない面もありました。類似の報告で、移植非適応AMLの寛解後療法として1年間のdecitabine投与を用いた報告でもOS, DFSともに治療群の優位性が示されていました。decitabine投与期間を1年間とすることの妥当性について質問したいと思いながら、聴衆で埋め尽くされた広い室内でマイクを握り英語を話すことに躊躇してしまったことを今でも悔しく感じています。

 ポスター発表には日常の些細な疑問を解決してくれる報告が多数ありました。特に印象的であったのは、TLSの治療はラスブリカーゼ 1.5mgで十分な量であるという報告とazacitidine投与中のMDS患者であっても、健常人と同様にインフルエンザワクチンによって抗体価が上昇するという報告です。こちらでは、会場の和やかな雰囲気と演者との距離の近さのお陰で、拙いながらも質問と意見交換をすることができました。

 ASHの期間は非常に刺激的で、臨床、発表への意欲が増したり、自分の未熟さに落ち込んだりと心身ともにめまぐるしく過ぎて行きました。今の自分の能力で吸収できたものには限りがあったと思いますが、終わってみると名残惜しく心から楽しかったと思える経験でした。臨床医として駆け出しの時期にこのような機会を与えていただいたことを、大変感謝しています。
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