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垣内 誠司先生(神戸大学 腫瘍・血液内科)

ASH2015参加報告 神戸大学血液・腫瘍内科 垣内 誠司

 このたびJALSG Young Investigator ASH Travel Awardをいただき、オーランド
で開催されましたASHに参加いたしました。オーランドは飛行機の乗り継ぎが必要
であり時差も14時間と大変な距離を感じました。例年トランジットでは寒波に
見舞われ足止めを食らうことがあると聞いており懸念しておりましたが、その点
は問題なかったものの世の趨勢を反映してか入国審査の行列が長く時間がかかっ
てしまい、結果的には何とか間に合ったもののトランジットの間隔の十分にある
プランを選択すべきであると反省しました。現地では日本の感覚からすると12
月とは思えないほど温暖で過ごしやすい気候であり、参加期間中は天候にも恵ま
れました。そのような状況でのASHへの参加報告をさせていただきます。

  ASHへの参加は昨年に引き続き2回目となりました。前回は会場の規模の大きさに
圧倒されさながら盛大な祭事のようでありただひたすらに圧倒されてしまい地に
足が付かなかった感覚がありましたが、このたびは前回の経験もふまえポスター
発表兼ねてある程度目的意識を持って参加できたことから、とても刺激的で実り
ある学会参加となりました。とはいえ、ある程度前回より心の準備をして参加し
たものの、今回の会場はわかれておらず一か所にまとまって開催されていたこと
から前回以上に会場の広さを感じ、それぞれの会場をまわることさえ一苦労でし
た。そして、演題は決して日本血液学会に比べて多いわけではないのですが、ひ
とつひとつの会場がとても大きいことと、演題に占める貧血や血栓凝固などの悪
性疾患以外の割合が非常に大きい点では違いがありました。教育講演内容に関し
ていえば日本血液学会と大きな違いはなく、逆に言えば日本血液学会でも非常に
良質にまとまった内容が聞けるように感じました。
 
  現在私は大学院生でトランスレーショナルリサーチに従事していることから、今
回の参加にあたり自分の目標としていたことは、現在従事している研究に活かせ
る研究手法を見つけること、そして国際学会において今後の医療の発展につなが
るようなトランスレーショナルリサーチの題材はどのようなものなのか見出すこ
とでした。どちらかといえば、全体的にやはり新規治療薬の大規模臨床試験を中
心とした演題が多く、ピンポイントに基礎研究がまとまったセッションはやや少
なくポスターセッションでは多く見られたように思いました。しかし決して多く
はないながらも、一般口演で発表されるトランスレーショナルリサーチの題材は
どれも刺激的なものばかりでした。当初は複雑な実験手技を組み合わせた莫大な
データのものやwhole genome sequenceなどの先端手法を用いたものが主流なの
かと想像していましたが、意外と比較的単純な実験手技ながらクリアカットであ
り情報量が多いわけではないけれども近い将来の治療の変化を感じさせるような
実践的なものが多く、その発想力はさすがであると感じました。そして、新規治
療といえばALLやリンパ系腫瘍を中心として免疫チェックポイント阻害薬の成績
が華々しく、分子標的薬とならびこれからの治療を一新させ得る大きな期待を感
じさせ、会場の熱気が伝わってきました。

  プレナリーセッションは昨年に続き非常に広い会場にいくつもの大きなモニター
で映し出され、前回同様に映画をみているかのような感覚にとらわれました。
midostaurinの化学療法への上乗せ効果のphase IIIのような新薬ももちろん魅力
的でしたが、rituximabやhydroxyureaのような従来の薬剤が日常臨床を大きく変
えるだろう発表もあり、そしてhemoglobin F産生のメカニズム解明のような基礎
的な内容も発表されておりかつ発表者が日本人であることにとても印象的なセッ
ションでした。

  自身のポスターセッションでの発表では参加者に興味を持って見てもらうことが
でき、拙い英語ではありましたが一通り説明したり質問に答えたりする機会を得
られ、無事に発表をこなせて胸をなでおろしました。

  最後になりましたが、ASHへの参加の機会を提供していただきましたNPO-JALSG支
援機構の事務局ならびに先生方に深く御礼申し上げます。ありがとうございまし
た。