よりよい白血病治療のために
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東京大学 血液・腫瘍内科  植田 航希先生

ASH2009 Reort  東京大学血液・腫瘍内科  植田 航希

2009年12月にニューオリンズで開催されたASHに、JALSGによる支援プログラムで参加させていただいた。
今回のASHの演題の傾向と、特に興味深かった数演題に関して、口演演題を中心に報告する。

第3日の午前までは、教育講演が主体であった。
特に、Non-Hodgkin-Lymphoma(NHL)のセッションで発表された、 transformed lymphomaに関する演題
(Dr. Steven H. Bernstein)が印象に残った。Indolent lymphomaからaggressive typeにtransformしたNHLの
治療には苦慮した経験が多く、確立した治療指針はないと思われる。Transformをきたすリスクファク ター・
分子病態に関する知見がまとめられた後、治療法として、自家移植・同種移植・bendamustinなどの新規薬
剤に関する過去の報告がまとめられ ていた。また、transformを起こしている部位が限局している場合、
その部位にだけ放射線治療(IFXRT)を施行することが有効である可能性があ るという、意外なstudyの結果
も紹介されていた。

 第3日の午後に行われるplenary sessionを皮切りに、多くの演題が発表された。ほとんどの臨床関連の
演題が多施設の前向き研究であり、基礎の演題も完成度の高い演題ばかりで、やはり血液学における最高
レベルの学会なのだということを強く感じた。

 まず、移植領域において、HLA ハプロ不適合移植におけるregulatory T-cellの養子免疫療法によるGVHD
予防に関する演題がいくつかみられた(演題番号4、演題番号45など)。それぞれ方法に若干の違いがあるも
の の、基本的にはドナーT cellをex vivoで除去してレシピエントに輸注すると同時に、regulatory T cellを培
養して生着直後に投与するというもので、重症GVHDの発症がほとんどない上に、従来のT細胞除去のみ
を用いた移植と比較して免疫再構築が非 常に迅速である、という結果が示されていた。
今後、こうした手法でHLAハプロ不一致の移植が安全に行われるようになることが期待される。

 正常核型AMLを中心とする予後中間群白血病や、再発・二次性白血病の予後層別化は、長年の課題で
あり、近年FLT3やNPMの変異が予後に与える影響 が明らかにされつつあるが、さらに層別化や個別医療
(薬剤選択など)を推進することにつながる、高速シークエンサーやSNPアレイなどを用いたゲノムワイ ドな
解析を行った報告が多くなされていた(演題番号 163-168など)。特に以下の演題番号165が強く印象に残
った。正常核型白血病における微細な遺伝子変異・コピー数変化を、正常対照として患者の口 腔粘膜の
ゲノムを用いて包括的に探索する手法で140症例を解析し、腫瘍抑制遺伝子と考えられるNF1のmutationが
白血病の7%に存在することを 見出した。そして、NF1の機能を欠損している白血病細胞は、mTORシグナル
阻害薬であるラパマイシンに高感受性であることを示した。基礎分野での発展 を直ちに治療に結びつけると
いう面で、素晴らしい試みであると感じた。

 また、白血病の発症年齢中央値から考えて、半数近い患者がintensiveな化学療法や同種移植の対象に
ならないにも関わらず、これまでこうした患者 への治療は確立していない。今回、高齢AML患者の治療とい
うセッションが設けられ、こうした患者の治療方針の層別化や有効な薬剤などに関して報告が行わ れた
(演題番号327,329,841-846など)。
演題番号327では、60歳以上のintensive chemotherapyを受けたAML患者1379例の解析から、
intensiveな寛解導入療法を施行してCRに至る確率を予測するスコアリングシ ステムが紹介されていた。
初診時の年齢(60-63,64-67,68-72,73-)・de novo AMLか否か・体温・ヘモグロビン値・血小板数・ALP・PT・
フィブリノーゲンをもとにスコアを付けることで、4つの群に分類できたというものであっ た。演題番号329では
同様に、LDH700以上4点・白血球1.5万以上2点・CD34発現2点・年齢65歳以上3点・NPM変異-2点(抄録と
一部異 なる)としてスコアリングすると、intensive chemotherapy後の生存率を4群に層別化できるということ
が示されていた。また、レナリドマイド(演題番号841,842)・ Azacytidine(演題番号843,844)などを使用する
PhaseⅠ/Ⅱの結果も紹介されていた。
今後、こうしたstudyの結果がまとまって いくにつれて、高齢者AMLの治療成績が改善していくことが期待
された。

 全体として、演題の内容を理解するのが精一杯で、あっという間に時間が過ぎてしまった印象であったが、
3日目の自分自身のポスター発表も含め、非常に有 意義で得るところの多い学会参加であった。
最後に、このような機会を与えてくださった、JALSGの先生方・事務局の皆様に、深く御礼を申し上げたい。