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名古屋第一赤十字病院  西脇 聡史先生

ASH2008見聞録  名古屋第一赤十字病院 血液内科 西脇 聡史

このたびNPO-JALSG支援機構よりASH研修費用補助をいただき、サンフランシスコで行われました50th ASH Annual Meeting and Expositionに参加させていただきました。

世界中から約24000人が参加しているという巨大な学会で、うわさでは耳にしていましたがやはりその規模の大きさには驚かされました。
会場は広く、 Moscone Center (West, South), San Francisco Marriottに分かれており、Sessionの間の30分で移動するのも大忙しといった感じで、非常に多くの最先端の演題が発表されていました。
そのうちのいくつかについて以下に述べたいと思います。

Plenary sessionではイタリアのFrancesco Zajaにより特発性血小板減少性紫斑病 (ITP)におけるデキサメサゾン単独(A群)とリツキサン+デキサメサゾン(B群)とのprospective randomized studyの結果が報告されました。
Intention-to treat (ITT)では52名がA群、49名がB群に、per-protocol (PP)では38名がA群、26名がB群に割り付けられ、6ヵ月後のsustained response (SR) (血小板数50×109/l)および30日までのinitial response (IR)が比較されました。
A群vs. B群では、SRはIITで36% vs. 63% (P=0.004)、PPで39% vs. 85% (P<0.001)、IRはIITで27% vs. 68% (P=0.001)、PPで31% vs. 69% (P=0.009)といずれにおいてもB群で有意によい結果となり、リツキサン+デキサメサゾンの有用性と安全性が示されました。
ITPにリツキサンは真 新しい話ではないですが、randomized studyで有効性を示したことが評価されたのかもしれません。

Imatinibの登場以降、治療成績が飛躍的に向上し、第二世代のチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)も開発され、さらなる治療成績改善が注目されている 慢性骨髄性白血病 (CML)においても、最新の知見がoralおよびposter発表にて紹介されました。
Imatinib抵抗例の対応は治療成績改善の鍵を握りますが、 イタリアのMichele Baccaraniより慢性期CMLにおけるdasatinibの成績が報告され、START-Rのdasatinib群での細胞遺伝学的完全寛解 (CCyR)達成率は24ヶ月で44%、progression-free survival (PFS)は12ヶ月で91%、24ヶ月で86%と良好な成績が報告されました。
一方、ドイツのSusanne Sausseleよりimatinib抵抗性のCMLに対する同種造血細胞移植の成績が報告され、第一慢性期でのoverall survivalが4年で94% と比較的良好な成績でした。
少数例 (n=36)の報告ではあるが、第二世代のTKIの長期成績が不明確である現在では同種造血細胞移植が適応となりうることを再認識させる結果となりまし た。さらにBcr-ablキナーゼドメインのmutationとして最も問題とされているT315I mutationに関して、Jorge CortesよりOmacetaxineのPhaseⅡ/Ⅲ trialの報告がされました。
同種造血細胞移植以外は無効とされているT315I mutationがあり、imatinib抵抗性のCML患者に対し、Omacetaxineを皮下投与し、CML-CP患者 (n=32)では80%で血液学的完全寛解、20%で細胞遺伝学的大寛解が得られ、2年のPFSは70%であり、今後、症例数の蓄積によるさらなる解析に 期待を持たせる結果となっていました。
これらはいずれも世界規模のtrialですが、欧米が中心で日本をはじめとするアジア諸国の名前がほとんどみられないことは残念な感じも受けました。

さまざまな薬剤が開発される中でも疾患の根治を目指すという意味で同種造血細胞移植が世界中で施行されていますが、移植片対宿主病 (GVHD)は依然として治療関連死亡の大きな割合を占めています。
Amin Alousiより急性GVHDに対するステロイドとEtanercept、 Mycophenolate (MMF)、 Denileukin diftitoxもしくはPentostatinの併用療法に関するPhaseⅡ randomized trialの結果が報告されました。
急性GVHDの標準治療はステロイド投与ですが、完全寛解 (CR)達成率は約35%とされており、急性GVHDに有効と報告されている薬剤とステロイドの併用療法の効果をみたtrialです。
治療開始後28日目 のCR率はEtanercept群 26%、 MMF群60%、 Denileukin diftitox群 53%、 Pentostatin群38%、56日目ではそれぞれ44%、73%、55%、62%とMMF群で最も有効性が高い結果となり、特に上部消化管で 92%、下部消化管で67%のCR率と致命的となりうる消化管の急性GVHDでも良好な成績となっていました。
ステロイド単独群との比較の結果が待たれます。
しかし、ステロイド以外のいずれの薬剤も日本での保険診療では使用できないものであり、世界との隔たりを感じずにはいられません。

他にも数多くの興味深い報告がみられました。朝7時より夜10時までという長時間にわたり、会場間の移動も含め非常に体力のいる学会でした。しかし、いず れのsessionも前から席がうまっていく感じで参加者の注目度の高さや熱意にも驚かされました。
世界で活躍されている有名な先生を間近で見、話を聞く ことができたことも大きな刺激となりました。

最後になりましたが、このようなすばらしい学会参加に補助をいただきましたNPO-JALSG支援機構およびJALSGに感謝を申しあげます。