よりよい白血病治療のために
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坂巻 壽先生(都立駒込病院)

成人急性骨髄性白血病における同種造血幹細胞移植- 
JALSG AML97研究の最終解析 都立駒込病院血液内科 坂巻 壽

同種造血幹細胞移植(allo-SCT)は超大量放射線/化学療法と同種免疫効果により急性骨髄性白血病
(AML)における最も強力な寛解後療法と考えら れている。しかし、allo-SCTの強力な抗白血病効果は
高い移植関連死亡率(TRM)により相殺され、化学療法に対して必ずしも優位とは言えない。
我々は、AMLにおけるallo-SCTの有効性を調べるためJapan Adult Leukemia Study Group (JALSG) AML97AML研究において、予後中間群/不良群の第一寛解期の患者で化学療法とallo-SCTの前方向比較試験を行った。

対象と方法

AML97研究は1997年12月から2001年7月までに15-65才までの未治療AML809例が登録された。
寛解導入療法として cytarabine (100 mg/m2 d1-7) と idarubicin (12 mg/m2 d1- 3)が投与され、
1回で寛解しなかった患者はもう一度同じ治療を繰り返した。寛解が得られた患者は3コースの地固め療法と
6コースの維持療法によるこれま でのJALSGでのAML治療を行う群と、治療強度を改善して4コースの地固め療法後は維持療法を行わない群の2群に割り付けられた。また、寛解症例はこ れまでのJALSGのAML研究から抽出された予後因子によるスコアリングを行い、予後良好、中間、不良の3群に層別化した。
50才以下で予後中間群/不 良群の患者は血縁同胞がいる場合には、本人と同胞のHLA検査を行った。
HLA一致の同胞がいる場合には移植群(donor群)とし、HLA一致の同胞が いない群(no-donor群)との比較
をintention to treatの原則で解析した。

結果

15-50才の患者で寛解が得られたのは503例であった。寛解症例の内、予後良好群、中間群および不良群
の5年生存率は68%、43%および29% (p<0.001)であり、JALSGでのスコアリングによる層別化は有効であった。予後中間群および不良群の内HLA一致の同胞が得られたのは 75例(donor群)、得られなかったのは95例(no-donor群)であった。8年での再発率はdonor群対 no-donor群が54%対78%(p=0.009)と有意にdonor群での再発が低値であった。TRMはdonor群対 no-donor群が16%対17%(p=0.948)と両群に差がなかった。無病生存率ではdonor群対 no-donor群が38%対18%(p=0.017)と有意にdonor群の成績が良好であった。
全生存率では45%対28%(p=0.089)と donor群が優位であったものの統計学的有意差は無かった。
しかし、36才-50才までの患者群では両群の8年生存率が47%対23% (p=0.032)と有意にdonor群の成績
が良好であった。

結論

AML97の比較試験から、allo-SCTは再発を防ぐことにより無病生存率を改善し、特に36-50才の予後中間群
/不良群のAML患者では生存率の改善に寄与することが明らかになった。
質問としては、移植の適応の日本の状況についてと35才以上で移植群の成績が良かったことについてでした。前者はともかく、後半はいくつかの交絡因子が絡 んでいるのでかなり答えにくい内容で、コンプライアンスの低さ(移植をしない群での移植と移植群での移植しなかった例が多い)ことが関連しているかもしれ ません。
全体で800例以上の登録があったとしても、実際移植群になったのは75例しかなく、結果的に十分なパワーを持って結論づける事が出来なかったことは臨床研究の難しさを物語っていると思われます。