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水田 秀一先生(藤田保健衛生大学)

第50回米国血液学会発表を終えて  藤田保健衛生大学 血液・化学療法科  水田秀一

 JALSG Ph+ALL208プロトコール小委員会のメンバーとしてimatinib併用化学療法後の造血幹細胞移植の
適応の部分を担当させていただく過程で、 Ph+ALL202移植例の後方的検索をさせていただく機会がござい
ました。参加施設の皆様の多大なる御協力のもと移植前処置やGVHD等様々な事項につ いての情報をいた
だき次期プロトコールの作成に役立てる事ができました。解析を進めて行く過程でJALSG会議でも何度かご
報告をさせていただき、最終的 にASHにて発表させていただく機会をいただきました。

 JALSG Ph+ALL202に登録された100例の内60例において第一寛解期での移植がなされているのですが、その移植成績について検討した内容を発表しまし た。演題名は“Efficacy of allogeneic HSCT during first
CR following Imatinib-combined chemotherapy in patients with Ph+ALL” であります。移植時年齢は15才
から65才まで中央値は37才、55才以上は8例で内6例がRISTを受けております.55才以下は全例 がmyeloabrativeな前処置を受けていました。幹細胞ソースとしては血縁が30例(内6例がHAL非適合)非血縁
が21例、臍帯血が9例であり ました.3例が生着不全のため再移植を受けております。中央値31ヶ月の観察
期間で37例が再発なく生存しております。
3年累積非再発死亡率は21%で再発率は17%でした。移植後3年でのEFSとOSはそれぞれ57%と63%と
良好でありました。移植に関連する予後因子 を検索してみましたが、意外なことに多変量解析で唯一有意と
なったのはbcr/ablのsubtypeでありました。Major bcr/abl群において明らかにOSやEFSが劣ります。
 このことはイタリアのグループがすでにHaematologica 2006; 91:377-380に同様の傾向を報告しておりま
すし、ドイツのグループも有意差は認めませんでしたがやはりmajor bcr/abl群が予後不良である傾向を報告
しております(Blood 2002:1536-1543)。双方においては非移植例も含めての検討でありますが今回の我々
の報告のように移植例に限ってsubtype間での予後を 検討した報告はほとんどないと思われます。その原因
としては累積非再発死亡率が41.7%と非常に高値であることが挙げられます。手元にある第一寛解期非移植群では逆にmajor bcr/abl群が予後良好となっていますので、major bcr/abl群において移植毒性に関する何ら
かの生物学的因子の発現がminor群と異なるのではないかということが推測されます。

 それ以外にもpre-imatinib eraでの移植成績をヒストリカルコントロールとして今回の解析結果と比較する事
でimatinibがPh+ALLに及ぼしている様々な影響を検討する事が可能になるとも思われます.JALSG ALL97
ではどうなっているかが気になる所です。

 発表の当日はかなり前の方の席にポツンとしょぼくれて座っていたのですが、ふと後ろを振り返ると宮脇先生、坂巻先生、大竹先生、薄井先生のお顔がありま した。アウェイで試合している時にサポーターに応援さ
れているようで大変心強く思いました。発表の直前まで原稿を読むのか、読まずに格好良くいくのかを迷って
いましたが、まずはきちんとJALSGのメッセージを伝えることが自分の役割だと思いゆっくりと原稿を読ませ
ていただきました。発表後の質問は再発 後の治療はどのようなものがなされたのか?MRDの意味付けは
?非移植群の予後は?高齢者の移植例が少し少ないように思えるけどどうしてか?等が聴かれま した。恥
ずかしながら留学経験のない私は面と向かってならだいたい言っている事はわかるのですが、千人以上が
収容できる広いホールでマイクを使われると声 がハウリングしてどうしても聞き取りにくくなってしまいます。
そのことが大変不安でした。発表の際にも少し聞き取りにくい質問もありましたが、あらかじめ 座長の先生
に“私は今回始めてのoral presentationなので非常に緊張しています。難しい質問をされるとフリーズすると
思うからその時には助けて下さい”と頼んでおいたせいか適宜ヘ ルプをしていただけました。これから初め
て国際学会で発表される方にはおすすめのテクニックです。

 今回の発表を通じてJALSGメンバーとの一体感を強く感じるとともに、JALSGが果たさなくてはならない
責務が山積していることも実感いたしました。
このような機会を得ましたのは、まずは参加施設の現場の先生が移植後CRFの問い合わせに快く御返答
していただいたことにつきると思います。発表のお許し をいただいたJALSG ALL202委員の皆様と迅速に
データ固定の作業を済ませていただいたデータセンターの皆様にも心から感謝申し上げたく存じます.

 発表後、ほっとする間もなく“Ph+ALL再発・難治例に対するダサチニブ併用化学療法プロトコール小委員会”委員長を拝命することとなりました。
この仕事をきちんとやり遂げることで今回の発表の機会をいただいたことへの恩返しとさせていただく所存であります。
今後とも微力ながらJALSGの発展に尽力したいと考えておりますのでよろしく御指導の程お願い申し上げます.