より良い白血病治療のために

急性骨髄性白血病

  急性骨髄性白血病の治療目標は病気を完全に治して、健康な日常生活を取り戻すことです(治癒)。この前段階として、化学療法後に得られる検査成績や全身症状の改善した状態を完全寛解と呼んでいます。化学療法後に完全寛解になった患者さんの比率(完全寛解率)と治療数年後に患者さんが生きている確率(生存率)が治療成績をみる目安になります。
  JALSGの調査ではAML87、AML89、AML92、AML95 およびAML97の研究で表のように80%前後の完全寛解率と40%程度の生存率が得られています。
  次の図はこれまでのJALSGの研究の生存率をまとめて示したものです。
  まだまだ満足のできる成績ではありません。これまでの研究を振り返ってみたいと思います。

研究

AML87
AML89
AMI92
AML95
AML97

患者数

188
232
566
430
789

完全寛解率

79.8
78.5
77.2
80.7
78.7

生存率

30.1
35.1
33.5
44.3
40.8

JALSGのこれまでの研究

JALSGのこれまでの研究

AML87研究では、(1)それまで標準的であった寛解導入療法(BHAC+DNR+6-MP+PDN)にVCRを併用することで完全寛解率と生存率を改善できるか、
(2)維持療法を長期継続することで、生存率を改善できるかという試験が行われました。
  その結果(1)VCR併用群では完全寛解率と生存率が有意に不良であること、(2)維持療法施行回数は4回施行群より12回施行群の方が寛解生存率が良いことが示されました(表2,図2)。

寛解導入療法
完全寛解率
VCR(-)
84%
VCR(+)
70%

維持療法
寛解生存率
4回
34%
12回
48%

薬剤名略称:商品名
BHAC:サンラビン
DNR:ダウノマイシン
6-MP:ロイケリン
PDN:プレドニン
VCR:オンコビン
図2

AML89研究では、(1)それまで標準的であった寛解導入療法(BHAC+DNR+6-MP+PDN、BHAC-DMP)とBHACをcytarabineに代えた治療法(Ara-C-DMP)が比較されました。また、(2)免疫療法剤であるubenimexの投与を3年間継続する群と無治療にて経過観察する群に振り分け、免疫療法の評価が行われました。
  その結果(1)Ara-Cを用いた方が完全寛解率と寛解生存率で有意に良いこと、(2)ubenimexを維持療法終了後に用いても成績が改善しないことが示されました(表3,図3)。

寛解導入療法
完全寛解率
寛解生存率
Ara-C-DMP
82%
35%
BHAC-DMP
72%
23%

Ubenimex
無再発生存率
投与
53%
非投与
52%

薬剤名略称:商品名
cytarabine :キロサイド
ubenimex :ベスタチン


図3

  AML92研究では、寛解導入療法に単球系白血病に特に効果が期待されるETPを追加することにより完全寛解率を上昇させ、生存率の向上につなげることを目標として計画されました。寛解導入療法はBHAC-DM療法とこれにETPを加えたBHAC-EDM(BHAC + ETP + DNR + 6-MP)療法が比較されました。
  その結果、長期予後のデータでややBHAC-EDM療法が上回る傾向があるものの、両群間に有意な差を認めませんでした(表4,図4)。

寛解導入療法
完全寛解率
生存率
寛解生存率
BHAC-DM
77%
30%
25%
BHAC-EDM
75%
38%
35%


薬剤名略称:商品名
ETP :ラステット、ベプシド
図4

   AML95研究では、新たに開発されたIDRを用いた寛解導入療法が採用されました。
  日本でこれまで行われていた治療に対する反応性を確かめて薬剤を追加する個別化療法(response-oriented individualized therapy)の有用性を評価するために、欧米で一般的な固定したスケジュールによる治療法との比較が行われました。
  その結果、両者の間に有意な差を認めませんでした(表5,図5)。

AML95の成績

寛解導入療法
完全寛解率
生存率
寛解生存率
個別化療法
79%
42%
26%
固定療法
82%
47%
30%

薬剤名略称:商品名
IDR :イダマイシン

図5

   AML97研究では、維持療法の必要性と造血幹細胞移植が評価されました。
  完全寛解後に強力な4回の地固め療法を行う群と3回の地固め療法後に維持療法を6回行う群の比較が行われ、予後が不良と思われる場合でHLAが一致する兄弟がいる場合は造血幹細胞移植が行われることになり、HLAの一致する兄弟のいない患者さんと比較されました
  その結果、維持療法を行わなくても成績が悪化しないこと、移植を受けた方が成績が良いことが証明されました。(図6、図7)。

図6 図7